1.「品質は君が作るのだ、検査からは生まれない」とは、Quality must be built into product, it cannot be inspected into it. を訳し、三菱重工業(株)名古屋航空機製作所(以下「名航」という)のスローガンにしたものです。約60年前のことです。
戦後、名航はF86F戦闘機を米国ノースアメリカン社と技術提携して生産に着手しました。日本における航空機生産の再開は戦後10年を経て再開されましたが、この間、戦闘機はプロペラ機からジェット機に代り、技術ギャップは計り知れないほどでした。

Quality must be built into product, it cannot be inspected into it.は、F86F戦闘機を生産していた米国ノースアメリカン社工場のスローガンだったのです。このスローガンは、名航においても役立つと考えて意訳して採用し、品質確保の必要性と検査行為からでは品質が確保できないことを全従業員に徹底しようとしたものです。

2.検査部門の必要性
品質を作りこむのは、設計部門と製造部門(含む購買先)であることは当然としても、図面に基づいて製品を製造し、不適合の発生がゼロとなる確率はまたゼロです。
航空機、航空エンジンのような厳しい運用環境の中、極限の軽量化のため高精度要求は必須であり、製造段階で最大に努力したとしても不適合は発生するのも事実です。

不適合の確率がゼロでないならば、不適合を「後工程のお客様」に流出させない仕組みも必要です。このことから検査行為は不可欠です。検査行為は、製造作業者自ら行う自主確認と、作業者と無関係の第三者的立場の検査員が行う方法があります。しかし、前者の検査行為は客観性に乏しく、人間の性悪説を採用する米国にあっては後者でした。

この考え方は日本の航空宇宙産業においても踏襲され、現在も続いています(最近は、作業者による自主検査を認めているようです)。正当性は別としても、現実論として検査行為は必要であり、その検査業務に責任をもつ検査部門(品質管理部門)の必要性もまた必然です。

3.付加価値を生まない検査行為
検査を行ったからといって製品に付加価値を生んでいるわけではありません。私が若い頃、製造部門の人から「お前はいいよな! 俺達が作ったものに対してケチをつけて給料をもらっているのだから・・」という言葉は、悔しくも悲しくもあり、今でも脳裏に焼き付いています。確かにその通りです。

しかし、それも15年もするとこれが自分の業務であり、お客様の立場を思えば、全く苦にならなくなりました。QA,QC技術者は、プライドをもって業務を遂行してください。

検査行為を第三者的に行っているのは、製造業では100%に近いのではないでしょうか。月産数万~数百万個の部品を製造する自動車、半導体産業においても、人が直接検査をしないにしても自動検査機で選別検査をしている企業は枚挙にいとまがありません。検査行為は、お客様の立場で実施することが大切です。そのためには、不適合は「あるはずだ」との観点から検査作業にあたることが大切です。
著者 門間

・書籍 Message for Aerospace Quality Engineers  2011年10月28日 第1版第1刷発行より