1.計測器の選定
検査の基本として、品質特性を適正に評価・検査するためには、計測器の選定が重要です。

例えば、品質特性が寸法の場合、被検査体のサイズ、特性の公差の大小、あるいは形状によってノギス、マイクロメーター、三次元測定機などの適切な計測器を使用して検査がなされなければなりません。当たり前すぎる話です。公差の10分の1から5分の1の精度を使用するというのも常識ですね。

そのことをISO 9001,JIS Q 9100箇条7.6*1の冒頭で、次のように規定しています。
「定められた要求事項に対する製品適合性を実施するために、組織は、実施すべき監視及び測定を明確にしなければならない。また、そのために必要な監視機器及び測定機器を明確にしなければならない。」*1:JIS Q 9100:2009年版の箇条です。

これは、製品の合否判定をするために図面の、どの特性を文書(検査指示書、試験要領書)で検査又は試験を指示しなさいと要求しているのです。さらに、計測器の選定について規定しています。お分かりと思います。

2.非破壊検査手法の選定
検査の中でも非破壊検査(浸透探傷検査、磁気探傷検査、超音波検査、X線検査等々・・・以下「NDI」という)において、製品をどのNDIで実施するかは図面で指示されます。

浸透探傷検査は表面欠陥(傷、クラックなど)の有無を検査するのに、磁気探傷検査は、単純な形状で磁性体の表面及び内部欠陥を検査するのに、超音波検査は面積(音波の反射面)のある欠陥(傷、クラックなど)を検査するのに、X線検査は体積のある内部欠陥(鋳物の空洞など)を検査するのに等々、それぞれ欠陥性状を検出するのに得失があります。
この特長を活かしてNDI手法を選定します。

3.NDIの検出限界
さて、本論の検出限界についてです。計測器に測定精度があるように、NDIにも測定精度に相当する検出限界があります。

浸透探傷検査では、表面欠陥で幅、長さ、深さがどれほどの大きさ以上の欠陥は検出できるがそれ以下のものはできない、磁気探傷検査ではどれぐらいの大きさ、超音波検査はどれくらいの面積、X線検査ではどれくらいの体積のある内部欠陥は検出できるがそれ以下のものはできない等々です。これが検出限界です。

設計部門は、この検出限界を知った上で図面(技術指示)を出されなければなりません。

例を述べます。H-2ロケットの第1段メインエンジンの重要な部品の図面指示は、当初は、「浸透探傷検査で欠陥はあってはならない」というものでした。品質管理部門もその図面で検査をしておりました。

部品の浸透探傷検査では合格と判定され、組立後の燃焼試験に回されました。しかし、燃焼試験で大きな破損事故があり、調査の結果は、ある溶接部の二番からの微細なクラックが進展したというものでした。ではその微細な初期クラックはどれほどの大きさかというと拡大鏡で見て判別できる数ミクロンというもので、現場検査での作業においての検出は実質困難なものでした。

おわかりのように、NDIの検出限界を理解した「何ミリ以上のインディケーションがあってはならない」とする指示が適切なのです。是正処置として図面指示をNDIごとに検出限界を定めて見直しするということです。

検出限界を理解するということは、検出限界以下の欠陥は製造段階に部品に作りこまれ、部品に存在するという
「損傷許容設計」を採用しました。損傷許容設計については、ここでは省略します。

著者 門間
・書籍 Message for Aerospace Quality Engineers  2010年9月7日 第1版第1刷発行より